黒いバンは闇に融けて進む。青いスーツと下着、銀縁も時計も靴もどこかに捨てたし、そいつの車は知らん。ちょうどいいネクタイで後ろ手に縛ると後部座席、厄介だから目隠しをして、後はお分かりだろう。
「おい、どこへ連れて行く。」
成起は、男の声を背に、初めて参加したマラ釣りを思い出していた。あの人は今、どこにいるんだ。
「まぁ、まぁ、着いてからのお楽しみだって。」
ダサい校章が首元で取れかかったジャージ1枚だった。薄ら寒かったのは覚えている。後は腰を、しっかり使う。お陰で翌朝、尻の筋肉痛が酷かった。
気の抜けた声で答える助手席の黒コップは、バックミラー越しに男の逞しい全裸を観察する。
3*歳。
職業は公**。
ツレはいない。別れたばかり。
トレーニングは週3回。
野*部。
初体験は1*歳。年上と。
チンポもアナルも大好きだ。
出発前に全て尋問する。一片の嘘もないのは、野郎のオールバックとクソ度胸、それに観念した様子から明らか。頭ん中はエグい釣り針に引っかかりっ放しだからか、抵抗するそぶりは微塵もない。カタギの筈だが、揉め事には自信がありそうだ。
犬と狐の合いの子みてぇなツラの下、太い首、ぐぶんと盛り上がった肩と二頭筋三頭筋、大外にデカく張った雄の乳と盛り上がる丸い胴、それらを彩る十分に生やかした胸毛臍毛腹毛、後部座席をいっぱいに突っ張るクソ長い脚を大きく開いてむしろ、全てを見せつける。
その中央に、ズンと咲く、黒い魔羅。
(長いな。)
運転席のおっちゃんはバックミラーをこちらに捻って、まぁまぁ80点とソラで値をつける。墨汁にたっぷり浸かったような太い球根キンタマと抱き合わせで、いずれ満点を叩き出すだろう。
+++++
「着いたぞ。」
高速降りて一刻。深夜のどことも知れぬ路地に停まった。
「俺はここで。後は頼むぞ。」
おっちゃんは黒バンと共に走り去る。戒めを解かれた男は、しかし何も身につけていないカラダで、同じくすっぽんぽんとスラバンと三人、交差点を斜めに。アスファルトが男の足裏を冷やす。
黒コップは、交差点角のコンクリートの塊、鄙びた◎番の戸をガラリと開ける。鍵閉めりゃ、もう誰も邪魔しには来ない。
『只今巡回中。御用の方はこちらから』
素っぽんぽんがズカズカと扉を開けて奥の宿直室へ。もっこりと盛り上がった3匹のオスが、微かにザーメン臭い6畳敷を素足で踏む。
「尻は。もちろん、喰らうだろう?便所は裏だ。」
微かに聞こえる高らかな排泄音と、気は確かなのか◎番の表で全裸で吸うタバコの薫りの両方を楽しみながら、成起は思い出す。
大事なことは、思い出さなければならない。
(ハァっ、ハァっ、。。んくっ、はっ、はっぁ、ああっ、・・・)
ガチャっ・・・ガッ、ガッ、ガッ・・・・
(イヤっ、ああっ、やっ、ヤメッ、ああっ、・・・・)
ギッ、ギギッ、ギッ、ギッ・・・・
あの日、静かに、しかし力強く揺れる、深夜のトイレの白く黄ばんだ仕切り。手を突っ張り、足をバタつかせたのもほんの1、2分の間、残りの時間はむしろ腰を浮かし、ケツを突き出し、舌を尖らせて、雄の荒波に初めての操を委ねた。
不健康なくらいに眩しい蛍光灯と、壁の四方を埋め尽くす汚ねぇ白い涙の縦筋、その上に浮かぶいくつもの卑猥な落書きが見守る中。
おっちゃんの繰り返すガッチリ逞しい振動と射出から、成起のキンタマは、マルっとおっちゃんの精子に乗っ取られてしまった。
((ずっぷ、ずっぷ)どうだぁっ、おっちゃんのハァ・・・なぁ・・・キモチっ・・・いいだろぁ・・・なぁ・・・あっ、ハァっ・・・!!!(じゅぷっ、どゅぷっ!!))
あの日の古くて黄色いザーメンが、成起のぴちぴちと新鮮な精虫を餌にして、四六時中ぐつぐつ若いキンタマの中で踊り狂う。前立腺をずんずん突き刺し、蟻の戸渡を満杯までぷうぷう膨らまして、もっともっとと、おねだりだ。日課の自慰は少なくとも四回、多くて七回、飯の数より多い。ちょっとでもおサボりした日にゃ、あっという間、キンタマがくす玉みたいに重くなる。チンポが苦しげにぼっかり天井向いて口を開ける。
爾来、自らの太(ぶ)っといチンポを使って、おっちゃんの尊い精子をばら撒くことだけが、成起の生きる目的になっちまった。床に。壁に。たまに天井まで。そして、男の体のまン中に。
ジャージの上から自らを撫でる。カラダは変わった。丸っこかった成起の肌肉は、あの日を境に逞しく、鋭く分厚く、しかしどこか陰を帯びてしまう。愛らしい乳首は焦げて尖り、低い声は更に太く、元は薄いヒゲも体毛も、今やもっさりだ。
チンポもタマもずっしりと重たい。腰にがっしりとしがみついて、絶えず己の欲をケツの底から太い角度で突き上げる。
好みも変わる。
もう、男しか、いや、オスしか見えない。誰でもいい、その谷間の穴に目一杯ぶち込むことしか、成起の頭にはなかった。
おっちゃんをいっぱい繁殖させるのだ。
タバコの薫りと排泄音がいつの間にか止み、みっちりと狭い六畳敷きにオスが揃う。他の二匹は裸だ。敬礼代わりにどちらも上に勃てている。
「見てぇか。」
「・・・・ハイ」
目を合わさない黒コップは顎をしゃくると、成起は立ち上がり、自分でスラパンを落とす。
「・・・(ゴクリ)・・・」
豆電球の下、どちらが鳴らした喉かは知れない。黒コップは舌打ちして突然の講釈を始める。
「・・・さっきも見たが、まぁ見事だろう。茶鞘付きの黒太極上真芯(ましん)反り。」
男は目を丸くし、眼前の成起の股ぐらと、それを指す黒い指の先を追う。竿の根本から、ゆっくりと上へ。
「造込みは正直な鎬(しのぎ)、刀身は一尺一寸の大立て、うち物打(ものうち)は三寸の浅色(あさいろ)桃変わり。」
「勃ちはしっかり敏角(びんかく)で、臍叩きの鳩尾(みずおち)突き、切先はご覧の通り、しっかりとふくら付いている。」
魔羅講釈はおっちゃん仕込み。成起の立派な逸物を指で示し、影をなぞりながら、一言一句、違うことなく釈することを命じられた犬。その指が先っ穂を指す。
「切先の鈴は玉光の咲割れ(たまひかりのさきわれ)、匂い口がきゅっと締まり、段違いなのが見えるか?」
「雁の首張りは棒樋(ぼうひ)に添樋(そえひ)の浮冠(うきかむり)。大屋根はご覧の通り、ぐっさりと突き破りだ。」
「刀身の横っ腹、そこの鍛肌(きたえはだ)も柾目(まさめ)がかって、実に見事だろう。」
黒コップの指が、亀頭から裏筋へと移動する。息を吸い、成起の下腹が膨れるごとに、まるで目玉のようにじっくりと丸く太くなる尿の口。
「よく見ろ、血管(ちくだ)がぴたりと走って映り良し」
「刃紋は菊水、茎(なかご)は摺上げの船底型、こんな若い肌なのに、きっきと刀目(とうめ)が通っている。」
「左右にコンマ一度も歪みズレ曲がりのない、正真正銘の名刀だ。鑑定書付きのな。」
雄を切る刀。
雄を割り、孕ませる刀。
おっちゃんの傍に似合いの、刀。
何人もの怪しい大人が検分し、計測し、白い涙を何度もこぼして書き上げた証。
無論、おっちゃんに何もかも乗っ取られた後の話だ。
すると男が、
「・・・・それがどうした。」
真っ赤な電球の下で、犬の侮蔑の笑みが浮かぶ。
「ハハっ、欲しいなら、作法が必要、ってこった。」
股開けよ。
成起が呟く。
その言葉に、それまでの講釈を右から左に聞き流していた雄が、さっ、と両腿を抱え、エムの字に。素人が見れば、成起に勝るとも劣らない見事な腹打ち撥(ばち)が、瞳孔虚ろな男のエムの中央でそそり勃っている。
(これが俺の力だ。)
成起は信じる。雄の床で、全てを捩(ね)じ伏せる力。ぴいぴいと小うるさい黒コップは目を伏し、それとなく男に、畳に背を預けるよう促す。
「(ピチャッ)・・(ひちゃっひちゃっ)・・・」
「くっ・・・ああっ・・・んっ、ああっ・・・」
開脚をさらに広げ、男の見事な雄菊花を豆電球の下で満開に咲かせる。ケツの毛が左右へ燃えるように逆立つそこに、犬は鼻ごと舌を埋めて、懸命に舐め上げ、指を突き入れ、ほじくる。好物を前に野生が止まらない。
「ごら、指、何本がイイ?(ずぶずぶズブ)言ってみろ、オラ」
「ヒィッ・・・ああっ、気持ちいっす・・・ああっ、くださいっ・・・」
成起は棒立ちのまま、畳の上で悶繰り返るオス達を静かに見下す。雄の床で布団を延べると匂いが堪らない、とはこの犬の弁。宿直の同僚が顔を顰める様子が目に浮かぶようだ。
「・・・できたぞ。」
散々啜り上げ、指で弄りまくった犬は、これ以上ないくらいに己の警棒をおっ勃てながら傍へ退(の)き、畳を見て呟く。
男は、両膝の裏をガッチリと抱えて、成起をまっすぐみる。
ください。
厚い唇の形と、喉仏が沈むだけ。
静かな室内でも聞こえない。
車ん中じゃ、あんなに度胸の据わったオスが、たった数分、ベロと汚い唾と指でふやかされただけなのに、もう萎んでいるのか。
くらえば、もう元にはもどれないぞ。
成起も、声には出さない。
そうだ。思い出した。初めて釣ったあの人も、こんな瞳の色をしていた。
いいんです。それを、オレに、ください。
蟻地獄のように落ち窪んだ穴は、中心に向かうとボッコリ、そこだけが蕩け落ちたかのように紅い空洞になる。その肉の穴に、ほんのちょこっとだけ竿刺したり抜いたり、穴の縁をぶるるん、ぶるるん、と震わせて、男の泪を増やす。
早く、ください。おれ、もうたまんねぇす。
あんなに肝が座ったオスでも、この魔羅の前ではここまでふやけちまう。
つまんねぇな。
そう思いながら成起は、上向きにぽっかり口を空けた肉へ、イキリ勃つ魔羅を下に向けて、ゆっくりとメリ込ませる。
「ハァっ、・・・・んんっ、ああっっ、でっけぇ・・・・」
ズブんっ、と振動して長く太い亀頭をカリまで突き込むと、男の顔が青黒い。黒コップは男の両かかとを押さえ、男の口を自らの肛門で塞ぐ。
「(グムっ、グムむむっ)」
「おおお、もうこんな入ってっぞ。分かるか、なぁ」
新しいオスの肉膣はいつも熱っちい。半分ほど喰わせると、成起は黒コップから奪ったオスの足首を両肩にかけて、ゆっくりと時間をかけて合体する。成起の胸毛が男の胸毛と触れ合い、むっさりと絡みつく。
成起は己のケツの底、キンタマの真裏からむあむあむあと、蟲たちが使命を帯びて起き上がるのを、つぶらな菊を精一杯引き絞りながら制する。
「うぉぉっっ・・・・うぉぉぉおおっぉぉぉおっぉぉっ!!!」
中が震え、加熱する。ずんっ、と肉を破るごとに新しい膜が塞がり、それを一枚ずつ、丁寧に押し割る。黒コップは、自らの黒い胸板に男の後頭部をゴッチリ押し当て、男の両腕を自らの腰に回して、その硬い黒警棒で男の脊髄を下から上へずるりずるりと撫でた。
「むっ・・・んぅっぬ゛ん゛っフぬッ・・・」
もっと奥へ。ずくっ、ずくっと、熱い涙で滴る腺の下へ亀頭を潜らせて、ちょっと腰を使うと、男は簡単にヨガる。カリをヒダヒダにずぶずぶっとめり込ませると
「あフぅっ゛っっ!!を゛っ、おおおぁっ!!んぐっ、ヌフっっん!!!っっッッッッ!!!」
もう人語が発せない。左目で真っ赤に血走った右目を、右目で潤んだ左目を直視して、窪んだ瞳孔に電波で我慢汁を飛ばす。男の骨盤底筋が巨大根をしっかり噛み込み、クソをクソするイキみの逆の力でずんずと亀頭を呑んでカリ首を抱き込むから、成起は腹筋にリキ入れてむしろ入れ食いを一気に引き摺り出す。して、押し戻されるとそれに抗ってずんっ、ほっ、ずんずんっと。ずっぷずっぷずっぷ、腰をしっかり使って、それを繰り返す。
「んんグオオぃぅんんっっ!!当゛た゛るっ、あ゛あ゛あ゛ あ゛ あ゛っあ゛っ!!!!」
有頂天のさらに上の途方頂点まで男を貫いて、瞬時に地獄煉獄の底まで引き戻す。たった三突きの突(ず)ぶッ根抜ッ根で、若い腸腰筋と大臀筋が男の肛門具合を熟知し、チンポ表面でスキャンした腸内地図を脳内に展開。おっちゃんを孕ませるためには、直腸ヒダをアイロン当てたみたく真っ直ぐに伸ばし、粘膜をできるだけ薄く滑らかにする必要がある。そうこうしていると、
「あ゛゛あ゛っ、ン逝ぐっっ、逝んグっっっっっ!!!!!」
背後から黒コップに涙汁が垂れるまで両方の乳首をぐり捥(も)がれ、バンザイした両腕を黒いアグラに絡みつかせていた男が、墨汁球根を何度もしゃくり上げて、精の花をパッパと咲かせる。つぶらな純白の粒が満満の開。
「逝ぐっっっっっ、ああっ、あンっ、ああっんっっっっっんっっん!!!!!!」
その花弁は眩しいくらいに真っ白(ちろ)だ。 太(ぶ)っとい首に、心臓の真上に、そして己の凛々しい眉の上に、垂れ下がるほどに熱く激しく。成起は、男の尿道が喘ぐそのパクパクを、スローモーションで網膜へと焼き付けながら、さらに腰を進めて男の腸壁に己を彫り続ける。しっかり腸(はらわた)を開いて極限まで薄くする必要がある。ところどころは裂けちまうかも。正常位で組み付くその真裏、分厚いキンタマを繋ぐ成起の菊が火を噴くように熱い。
(ぬんっ、ぬんっぬんっ)
成起の鼠蹊部いっぱいが男の肛門にみっちり蓋をしているから、中を突き破って直腸の柔壁を開発する音は外には漏れない。くぐもった肉の音が不気味に毛穴から染み出すだけ。
「ぐはっぁ、あんっ、アンっっ、を、またっ、また逝くっっっっっ!!!!」
男の真っ黒いキンタマが三時と九時の方向を向いて泣き分かれ。逆立つ毛だらけ縦長の2つの球体がぼんぼこ踊り、面白いようにぴゅっぴゅと噴き出す。その飛沫が次第に太く、煌めきが長くなり、
「あぁっっ、ぁ゛っ、あああああああああ!!!!!!!っっっ!!!!」
ジョボぼボボボボぼボボぼぼボボぼぼぼぼぼっっっ!!!!
「あっあっ、俺も逝くっっっっ!!!」
男の腹筋を縦断し、美しい潮の虹が架かるのと同時に、黒コップが男の首裏、太いうなじへ大量の精を撒き散らす。黒い裸は、もう耐えられなかったのだろう。己よりもずっと若年の小僧っこが、地獄のような極楽チンポで肛門をイワしている振動と音と匂いに。恥ずかしくて顔が上げられず、ずっぷずっぷと寄せては返す成起の紅潮した汗浮く額にも、俯いたままだ。そして、いよいよ
「あっ、あっ、俺もっ、イきますっ、んっ、んんっ。」
成起の鼠蹊部が男の菊穴にぴったり密着すると、トドメに、ずんっ、と蓋をする。大事な汁が、漏れないように。
ここからはいつも時が止まる。
成起はギュッと目を瞑り、薄ら髭の浮いた頑健な顎をグッと引いて、おっちゃんに激しく熱く抱かれた便所の天井を思い出す。
大事なことは、思い出さなければならない。
うら若き肛門がボッボと焦げ付き、キンタマとは近いが全く別の部分、成起も知らない、もっと奥の深い緻密なところをぶるぶる太く揺さぶって、激しい流れが、一瞬の澱みもなく、ほとばしる。
(ん゛♡゛ん゛♡♡♡ん゛ん♡♡♡♡゛ん゛ん゛っっっっっっッッッッ!!!!!!!)
奥歯をギッチリ噛み締め、必死に声を堪える。己の首輪を引き綱で引くように。
想像を絶するような情動が、まだ成るに満たない若いカラダを縦横に駆け巡る。
成起の、否、おっちゃんの精蟲の頭が、キンタマを底から暴れほじくり返し、精管をグリグリ押し拡げながら、未知なる逞しいカラダへと噴き出していく。
ここで堪えなければ、ジブンがジブンでなくなってしまう。脳みそが吹っ飛んで、意識が溶けて、残るのは誰だ、おっちゃんか?分からない。それは分からないが、風速ゼロメートルの激しい快感が成起をずっぷり貫いて、巨根はカンカクのないただの肉筒に、その中をしっかり液体で満たして一気にこぼす。
「おおっっ、おおぁっおあっ、おおぁぁぁっっっんんんっふぅぅぅぅぅっっっ!!!!」
男は注がれる液体を白目剥き泡吹いて受け止める。
それが、己が己で無くなるための、繁殖儀式であることも知らずに。